『酵素』ってなに? どんなはたらきをするの?

   

酵素とは

『酵素(こうそ)』とは、生体でおこる化学反応触媒する物質のことをいいます。

生体内のほとんどの化学変化は酵素(enzyme)というタンパク質によって触媒されます。

酵素と結びつき変化を受ける物質を基質(substrate)といいます。

 

基質は酵素分子の表面の特定の部位(活性部位, active site)に結合し,

酵素タンパク質が作りだす特殊な環境により,いったんエネルギーの高い状態の

(ただし,触媒がない場合よりは低いエネルギーで済む)酵素-基質複合体

形成します。

 

この状態から,基質は生成物(Product)へと化学形を変え,酵素から離れます。

それと同時に,酵素は元の分子状態に戻り,再び次の基質と結合します。

このはたらきにより化学反応が次々に促進されることになります。

酵素反応の一般的な表し方
     E + S                   ES                 E + P

 

     E:酵素 S:基質 ES:酵素-基質複合体 P:生成物
 

 

酵素と活性化エネルギー


では、酵素がある場合と存在しない場合とでは反応の速度や程度に

どのくらいの差が出るのでしょうか。

            

上のグラフをご覧下さい。

これは過酸化水素の分解をおこなうのに金属の白金カタラーゼという酵素を

触媒 として用いた場合の比較をした検証結果です。

 

この実験で分かるのは、カタラーゼ酵素を用いた方が、より少ないエネルギー

で同等の反応を促進することができるという結果が導かれます

 

なんと、数値を測定すると、カタラーゼは白金より10万倍も触媒能が高い!

無触媒に比べれば,数億倍にな ります。

酵素の素晴らしいはたらきの効果をご理解いただける一例です。

最近の洗濯洗剤に酵素が使われていますが、これも酵素が持つタンパク質などを

分解する力に着目してのことなのでしょう。

 

植物の生育と酵素

それでは、次に酵素が植物の生育に与える影響をみてみましょう

ペチュニアという植物は、繁茂力が強くその茎がどんどん伸び続ける性質をもってお

り、右下の写真が通常の生育状況です。

 

植物の生長は植物自身が生体内でつくる「ジベレリン」というホルモンが細胞に

刺激を与えて起こりますが、ペチュニアの生育にもこのホルモンが作用しています。

ジベレリンは細胞内ではおもに酸性化しているときにのみイオンとして

はたらいていると考えられています。

 

独立行政法人理化学研究所の実験では、別の植物(シロイヌナズナ)からとった

酵素をペチュニアの中で生成されるようしたところ、細胞内が酸性から中性に

変化 ジベレリンが不活性となり、生育が抑制されて丈の短いミニベチュニアが

得られました。

 

酵素のこの性質を利用することにより、植物の生育をとめ観賞用の小さな鉢植えを

つくることが可能となりました。

 

上の実験は、生育を抑制する目的の実験ですが、逆に生育を活性化する酵素を

植物に与えた場合には促進の効果が現れることになります。

当社の製品の効能は、まさにここにあります

 

ただし、酵素は多くの場合熱や酸性度(PH)などの影響を受けますので酵素が

最もはたらきやすい環境に配慮する必要があります。

 

参考

 酵素研究の歴史


紀元前〜 パン,ビール,ワインなど→発酵(fermentation)。発酵は生命力のなせるわざ!
19世紀中頃 パスツール→発酵は酵母中の易熱性物質が関与)
1822年 W. バーモント
銃で胃に穴の開いた猟師の胃を外から観察→消化も発酵と似た作用による
1835年 ベルツェリウス
ジャガイモ中にデンプン分解作用を持つ物質を確認
1878年 キューネ
酵母(ギリシャ語"zyme")の中("en")で発酵が起きることから,『酵素』(= enzyme)という用語を提唱。当時,まだ酵素の化学的本体は不明であった。
1890年 E. フィッシャー
酵素の"鍵と鍵穴"モデルを提唱。
1897年 ブフナー
酵母を砂ですりつぶして透明なろ液を得た。これが「アルコール発酵」作用を保持していることを証明。また,熱処理で活性が消失する(失活)ことも観察。→発酵の生命力説を否定。実体は高分子か?
1902年 ブラウン(英)とアンリ(仏)
スクラーゼの活性は酵素濃度に依存。反応の途中で基質と酵素は「酵素-基質複合体」をつくるという概念。
1913年 ミカエリス、メンテン
『ミカエリス・メンテン式』を発表。
1926年 J. B. サムナー
ナタマメから酵素ウレアーゼ*(urease)を結晶化。これはタンパク質からできていた。
酵素=タンパク質
  *NH2CONH2 + H2O → 2NH3 + CO2
1930年代 J. H. ノースロップ
ペプシン,ペプシノーゲン,キモトリプシン,キモトリプシノーゲン,トリプシン,トリプシノーゲンの結晶化。
1982年 チェックやアルトマン
触媒作用を有するRNAである『リボザイム』を発見。(触媒作用はタンパク質だけによらない。生命の起源はRNAから始まったとされる『RNAワールド仮説』へ)

酵素の分類

酵素は,その触媒反応の形式によって,次の6つに分類される。
酵素の分類と名称酵素 反応の形式 例
1. 酸化還元酵素
(Oxidoreductase) 酸化還元反応 デヒドロゲナーゼ群 [2水素利用],シトクロム群 [Fe2+/3+利用],
カタラーゼ,オキシダーゼ群,
オキシゲナーゼ群,脂肪酸不飽和化酵素

2. 転移酵素
(Transferase) 原子団転移反応 アシル転移酵素 [アシル基転移],キナーゼ群 [リン酸基転移],
アミノトランスフェラーゼ群 [アミノ基転移]

3. 加水分解酵素
(Hydrolase) 加水分解反応 タンパク質分解酵素群 (プロテアーゼ),
脂質分解酵素群(リパーゼ),
糖質分解酵素群(アミラーゼ,リゾチーム,β‐ガラクトシダーゼ)
リン酸分解酵素群(ヌクレアーゼ群,ホスファターゼ群,制限酵素)
その他(ウレアーゼ,ATP加水分解酵素)

4. 脱離酵素
(Lyase) 付加および脱離反応 炭酸ヒドラターゼ,ピルビン酸デカルボキシラーゼ

5. 異性化酵素
(Isomerase) 異性化反応 ラセマーゼ群,ホスホグリセリン酸ホスホムターゼ,
グルコース6-リン酸イソメラーゼ

6. 合成酵素
(Ligase, Synthetase) C-C, C-O, C-N結合
などの生成反応
(ATPを要求) DNAリガーゼ,アミノアシルtRNA合成酵素,
アシルCoAシンテターゼ,カルボキシラーゼ群


補助因子:
活性を発揮するためにアミノ酸以外の成分(補助因子)を必要とする酵素もある。タンパク質部分をアポ酵素(apoenzyme),補助因子を結合した状態の酵素をホロ酵素(holoenzyme)と呼ぶ。

共有結合した色素(補欠分子族という):
FAD, ヘム(シトクローム類,カタラーゼ,ヘモグロビンなど),ビオチン,リポ酸など
ビオチニル基(Lys残基に結合)
リポイル基(Lys残基に結合)
金属イオン:
Mg2+: ヘキソキナーゼ,ホスホグルコムターゼ,グルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼ,EcoRV他
Ca2+: a-アミラーゼ
Zn2+(配位): アルコールデヒドロゲナーゼ,カルボキシペプチダーゼA,アルカリホスファターゼ,カルボニックアンヒドラーゼ(CA),サーモリシン他
Cu2+(配位): チロシナーゼ
Mo6+,Fe3+: キサンチンオキシダーゼ,硝酸レダクターゼ
Cu2+, Zn2+(配位): スーパーオキシドレダクターゼ,アルギナーゼ
Se: グルタチオンペルオキシダーゼ
K+: プロピオニルCoAカルボキシラーゼ
補酵素(coenzyme):
非共有結合でアポ酵素に結合した有機化合物。NAD+, NADP+, FAD, FMN, TPPなど
ビタミンB類はこれらの補酵素の原料である。
左はアポ酵素(不活性)を表す。補助因子(●)


 

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